Story

あふれる涙が軽やかな旋律に変わる。ロンドンから届いた感動作。

息子の真実を知らない母、真実を隠し続けようとする恋人。
悲しみが二人を分かち、そして二人を結びつける。

初老を迎えたカンボジア系中国人のジュン(チェン・ペイペイ)。ロンドンの介護ホームでひとり暮らしている。英語もできない彼女の唯一の楽しみは、息子のカイ(アンドリュー・レオン)が面会に来る時間だった。優しく美しく成長した息子のカイ。言葉のわからない彼女にとって、息子のカイだけが、ロンドンと彼女をつなぐ存在だった。

ジュンの気がかりは息子が友達に優しすぎること。なぜカイは、友達のリチャード(ベン・ウィショー)と暮らすのか。そのために自分をこんなホームに入れるなんて。大切なのは家族なのに。そんな文句をカイに言うが、彼は返事をはぐらかし、明日のディナーを自分の家で、とジュンを誘う。

「明日、ディナーに来てくれるよね」「もちろんよ」
「料理もしてくれる?」「あたりまえよ」

カイは自分がゲイで恋人リチャードを深く愛していることを母に告白できず悩んでいたのだ。そして訪れる、突然の悲しみ。孤独なジュンを心配したリチャードは、カイの”友人”を装ったまま、ジュンの面倒を見ようとするが……。
違う文化、違う世代を生き、言葉も通じないジュンとリチャード。愛する人を失った痛みを共に感じているのに、愛ゆえに大きな亀裂が生まれてしまう――。