苦い銭

背景

雲南省昭通市巧家県 地図

シャオミンたちの故郷から20時間

雲南省昭通市巧家県は、雲南省東北端に位置し、四川省と貴州省に隣接する山間地。ワン・ビン監督の2012年作『三姉妹.雲南の子』の撮影地はこの周辺である。2014年8月にこの地域で大地震が発生し、甚大な被害が出た(バスの中でシャオミンがこの地震のことを隣の女性と話している)。
雲南から出稼ぎ先の浙江省の省都・杭州までは約2200キロ、列車で20時間ほどかかる。

日本の100円ショップ商品も

列車の中で、男が、働いている工場の排出ガスが危険だと中年の女性と話をしているが、その工場がある義烏(イーウー)という場所は浙江省にあり、そこには巨大な雑貨卸売り市場「義烏小商品城」があって、世界中からバイヤーが訪れる。日本の百円ショップの品物のほとんどは、この義烏の商品だという。

子供服の街、浙江省湖州市織里

列車を降り、シャオミンたち3人が向かったのは、浙江省湖州市織里(ジィリー)。湖州は、上海から西へ149キロ、車で1時間半の距離である。湖州は昔から養蚕が盛んで質の良い「湖州シルク」で栄えた所であり、特に織里は、1995年に町レベルの経済発展モデルの一つに国から指定され、この20年来、大きな経済発展を遂げてきた。工業団地には、おびただしい数の衣類加工工場が集まり、子供服の生産は全国の7.8割を占め、「中国童装名鎮」(子供服の町)と命名されるほど世界的に有名になった。

社会問題化するマルチ商法

日本ではねずみ講は違法だが、マルチ商法は必ずしも違法ではなく、有名なマルチ商法の会社が存続している。しかし、中国では有限連鎖か無限連鎖かという観点に限らず、ねずみ講式のマルチ商法(連鎖販売)は1997年に制定された法律によってすべて取り締まりの対象となっている。しかし、近年でもマルチ商法にからむ事件は多発しており、今年も大学生の自殺者まで出る事件が起きている。

協力=樋口裕子

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