タレンタイム〜優しい歌

タレンタイム〜優しい歌

アジアの宝物、今は亡きヤスミン・アフマド監督の最高傑作。8年の時を経てついに待望の劇場公開。

歌ってごらん、笑ってごらん すべてを越えて、心は届く

Talentime|2009 |カラー |115 分 | マレー語・タミル語・英語・広東語 |新字幕|DCP 監督・脚本:ヤスミン・アフマド 撮影:キョン・ロウ 音楽:ピート・テオ 出演:パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール、モハマド・シャフィー・ナスウィ、ハワード・ホン・カーホウ 配給:ムヴィオラ

2つの名曲、2つのバージョン!

  • 予告編(I goバージョン)
  • 予告編(Angelバージョン)

2009年7月25日、51歳の若さで亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマド。
アジア映画の未来への道しるべと期待された彼女の早すぎる死は世界中のファンを悲しませました。ヤスミンの最高傑作で、長編映画としての遺作になった『タレンタイム(原題)』(2009)が『タレンタイム〜優しい歌』の邦題で、ついに8年の時を経て、初の劇場公開となります。

ヤスミン・アフマドは、1958年7月1日生まれ。母方の祖母は日本人。2003年に監督デビューし、2004年の『細い目』が東京国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞。その後も素晴らしい作品を発表し、国際的にも注目を集めましたが、本作『タレンタイム〜優しい歌』を発表後、脳内出血により緊急入院し、急逝しました。活動期間はわずか6年。その間に残した長編は6本でした。

マレーシアについて

ヤスミンが遺した映画は多民族国家マレーシアを映しだし、マレー語・中国語・タミル語など言語も複数使われ、民族や宗教が異なる人々が登場します。彼女は様々な人々が混在する世界をそのまま肯定し、民族や宗教の壁を軽やかに越えるヤスミン・ワールドともいうべき世界を描きだしたのです。

『タレンタイム〜優しい歌』は、2009年、彼女の死後に福岡と東京で映画祭上映。その後も、たくさんの人に愛され支えられ、自主上映が続けられ、多くのファンが生まれ続け、映画を見た人のほとんどが、宝物のような映画、生涯のベストワンと語る伝説の映画となりました。

物語・登場人物

物語・登場人物

物語

物語

ある高校で、音楽コンクール“タレンタイム” (マレーシア英語=学生の芸能コンテストのこと)が開催される。ピアノの上手な女子学生ムルーは、耳の聞こえないマヘシュと恋に落ちる。二胡を演奏する優等生カーホウは、成績優秀で歌もギターも上手な転校生ハフィズに成績トップの座を奪われ、わだかまりを感じている。マヘシュの叔父に起きる悲劇、ムルーとの交際に強く反対するマヘシュの母、闘病を続けるハフィズの母…。マレー系、インド系、中国系…民族や宗教の違いによる葛藤も抱えながら、彼らはいよいよコンクール当日を迎える……。

登場人物

登場人物

登場人物

監督

監督

現実を見つめながら、決して微笑みを忘れず、前を向く愛と寛容のヴィジョン。

ヤスミン・アフマド

監督・脚本:ヤスミン・アフマド

Yasmin Ahmad

1958年1月7日生まれ。母方の祖母は日本人。イギリスで心理学を学び、その後CMの世界で働く。03年に『ラブン』で監督デビュー。その後、『ラブン』に登場した、実の妹オーキッドの名前をとった主人公が登場する“オーキッド三部作”『細い目』(04)『グブラ』(05)『ムクシン』(06)を発表。『細い目』はマレーシア・アカデミー賞に輝くだけでなく、東京国際映画祭最優秀アジア映画賞も受賞、『グブラ』でもマレーシア・アカデミー賞を制し、『ムクシン』はベルリン国際映画祭で受賞。国内外で大きな注目を集め、アジア映画の将来を担う監督と期待される。続く『ムアラフ-改心』(07)でも東京国際映画祭アジア映画賞スペシャル・メンションに輝く。2009年3月26日、本作『タレンタイム〜優しい歌』がマレーシアで公開。しかし同年、7月、脳内出血により緊急入院し、7月25日に51歳の若さで亡くなった。
2003年の第一作以来、活動期間はわずか6年。その間に残した長編は6本。次回作には日本人の祖母をモデルにした「ワスレナグサ」の撮影が準備されていた。ヤスミンは自身を「ストーリー・テラー」と呼んだ。最も影響を受けたのはチャーリー・チャップリンで、オール・タイム・ベストの1本は『街の灯』。その理由を「人生には、とても楽しい瞬間のそばにいつも悲劇が隣り合っているという私の考え方が『街の灯』に通じているからです。だから、最初から最後まで気難しい映画を観ることに私は耐えられません」と語っている。

フィルモグラフィー フィルモグラフィー

音楽

音楽

本作の魅力をさらに輝かせている大きな力が、音楽の力であることは間違いない。冒頭の学校を映す場面に重なる曲で、またムルーの家でメイド以上の存在として家族の一員になっているメイリンがピアノで弾くのは、ドビュッシーの「月の光」。タレンタイムでダンスを披露する少女が使う楽曲として、そしてエンドクレジットにも使われているのは、インド映画『Aaja Nachle(アージャー・ナチュレー/おいで、踊ろう)』(07)の曲で、ラーハット・ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンが歌う「O Re Piya(オー・レー・ピヤー/おお、愛しい人よ)」。そして何よりこの映画の主調となり、映画を見た誰もが忘れられないのが、マレーシアの人気アーティストであるピート・テオが作曲した「I Go(アイ・ゴー)」、「Angel(エンジェル)」「Just One Boy(ジャスト・ワン・ボーイ)」だろう。

作曲者のピート・テオは、1972年生まれ。ミュージシャンとしてだけでなく、俳優、映画プロデューサーとしても活躍し、マレーシア新潮流の映画を支える重要な人物の一人だ。2015年に日本で開催されたマレーシア映画ウィークでは、主演作『黒夜行路』(09)やプロデュース作『15 Malaysia』(09/若手監督15人によるオムニバス)が上映されている。ピート・テオとヤスミン・アフマド監督の関係は、2004年に始まり、ピート・テオのブログに「あなたの音楽が大好き」とヤスミンがメッセージを送ったのがきっかけで、彼が初めて楽曲を提供したヤスミン作品は2005年の『グブラ』だった(『グブラ』では主題歌「Who for you?」もピート・テオ自身が歌っている)。以来、ヤスミンとの共同作業が始まり、長編映画だけでなくミュージックビデオやCMでも一緒に仕事をした。

『タレンタイム〜優しい歌』の劇中歌、「I Go(アイ・ゴー)」「Just One Boy(ジャスト・ワン・ボーイ)」を歌っているのは、アイザット(Aizat)という1989年生まれのシンガーソングライター。「Angel(エンジェル)」は、アティリア(Atilia)という女性ヴォーカリストが歌っている。映画のオリジナル・サウンド・トラックCDには、それぞれの映画版とともに、映画では使われていないマレー語版も収録されている。

音楽: ピート・テオ Pete Teo

1972年12月26日生まれ。マレーシア、ボルネオ島サバ州の出身。シンガーソングライター、映画音楽家、俳優、映画プロデューサーとして活躍するマルチ・アーティスト。つい先日は、押井守監督のアニメ映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017年4月7日公開予定/ルパート・サンダース監督)に、主演のスカーレット・ヨハンソンやビートたけし、桃井かおりや福島リラらとともに出演していることが公表された。(ピート・テオが演じるのは“トニー”という映画版のオリジナル・キャラクター)。

英語、広東語、北京語(普通話)、潮州語、客家語、マレー語を話す。10歳の時にシンガポールに、15歳でイギリスへと渡り、その10年後、香港に移った。イギリスにいる頃からライブ活動を始め、香港に移った1990年には“Mid-Century”というデュオを結成。その後、マレーシアに戻り、2003年に初めてのソロアルバム「Rustic Living For Urbanites」をリリースし、日本でもツアーを行うなど人気となり、以来マレーシアのみならず国際的に活躍している。ヤスミン以外にもマレーシア新潮流の監督たちと交流が深く、ジェームス・リーやホー・ユーハンなどの映画の音楽を手がけたり、俳優として出演もしている。レナード・コーエンやヴァン・モリスン、ニーナ・シモンなどを愛し、日本のミュージシャンでは故・高田渡さんを敬愛し、2006年のアルバム「TELEVISION」には高田渡さんの息子・高田漣さんが参加している。

● ピート・テオ公式サイト:http://www.peteteo.com/

pagetop