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怒れ!憤れ!─ステファン・エセルの遺言─

デモはテロじゃない!

93歳の元レジスタンス闘士が書いた、わずか32ページのパンフレットが、全世界30カ国語に翻訳され、多くの若者の心を動かした。ステファン・エセル ─ 世界の不公正に抵抗した矜持の人 ─2013年2月27日に死去したエセルの遺言ともいうべき書、「怒れ!憤れ!」を映像化!

2014年2月下旬よりK's cinemaほか全国順次公開!

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INTRODUCTION

「無関心はいけない。世の不正義に目をつぶるな。怒りを持って行動せよ」ステファン・エセル

93歳の元レジスタンス闘士が書いた、わずか32ページのパンフレットが、全世界30カ国語に翻訳され、多くの若者の心を動かした。
ステファン・エセル----世界の不公正に抵抗した矜持の人----
2013年2月27日に死去したエセルのその遺言というべき書、「怒れ!憤れ!」を『ガッジョ・ディーロ』『愛より強い旅』のトニー・ガトリフ監督が映像化!。

君は怒りをもって生きているか? 93歳の元レジスタンスの闘士が、若者たちに怒ることの大切さを語りかけた、わずか32ページのパンフレットが大ベストセラーとなって、欧米の若者の心を動かした。エセルが訴えたのは非暴力のパワー。そのメッセージは、2011年スペイン15M運動にはじまるヨーロッパの大衆運動〈INDIGNADOS(怒れる者たち)〉に火をつけた。パリ・バスティーユ、ギリシャ・アテネ、トルコ・イスタンブール……そしてアメリカの「ウォール街を占拠せよ」へ!この映画は、世界中で大きな注目を浴びたエセルのその著書「怒れ!憤れ!」にインスパイアされたトニー・ガトリフ監督最新作である。物語はあるものの、ガトリフ監督らしく、そのメッセージはむしろ、体の奥に響いてくる音楽と目に焼き付いて離れないイメージで語られる。君は怒りを持っているか?今の日本にエセルが問いかけている。

スタッフ
監  督:トニー・ガトリフ
脚  本:トニー・ガトリフ
     ステファン・エセル著「怒れ!憤れ!」(日経BP刊)よりの自由な翻案による
     オリジナル音楽:デルフィーヌ・マン=トゥレ、ヴァレンティン・ダマニ
撮影監督:コリン・オウベン、セバスティアン・サドゥン
音  響:フィリップ・ウェルシュ、ピエール・ボンピー
編  集:ステファニー・ペデラク
音響編集&ミキシング:アダム・ウォルニー

キャスト
ベティ、イサベル、フィオナ・モンベ、ノリグ、ナウェル・ベン・クレム、エリック・ゴンサレス・エレロ、カリーヌ・ゴンサレス、マウード・ヴェルディエ、オウレリアン・ル・ゲリネル、アディアトゥ・サコ、リュシー・ロウストリア

SYNOPSIS

家族へ。ヨーロッパから良い報せを送ります。アフリカからヨーロッパにやってきた少女。たどり着いたのはギリシャ、アテネ。仕事を探すものの、仕事どころか眠る場所にさえありつけず、警察に拘束されて強制退去させられる。少女はフランスにたどりつく。パリ。市民や観光客の目の届かない裏通りには、多くの不法移民や差別され追放された者たちが路上に暮らす。バスティーユ広場には「真の民主主義を」と訴える若者たちが集まっていた。少女は再び、警察に捕らえら、アテネへと送り返される。その街で声をかけてきた少年の手配で、少女は1ユーロで水を売るが、何の足しにもならない。少女はよりよい場所を求めて、密航する。スペイン。世界に絶望しかけた彼女の前に、世の不正義に反対する若者たちの声が聞こえてくる……。

AUTHOR

「レジスタンスの動機は怒り。自由が回復した戦後になっても、フランスが植民地アルジェリアの民族独立を封じ込めようとしたアルジェリア戦争、社会主義を掲げながら自国や東欧を抑圧したスターリンの独裁政治など、怒りの種は尽きなかった。いまの世界は相互依存が強く、わかりにくくなっているが、それでも容認できないことはたくさん存在する。貧富の格差拡大、人権、地球環境など、世の矛盾や不正義は周囲を見回せばいっぱいある。だから、若者よ、怒れ!憤れ!」S・エセル

1917年ベルリン生まれ。父は作家で、母は画家。父方からユダヤ人の血を受け継ぎ、一家は、反ユダヤの風潮が高まるベルリンを離れ、パリに移住。その家には、ピカソやエルンスト、マン・レイ、ベンヤミンなどが訪れたという。フランス国籍取得後、第二次世界大戦が勃発。ドイツ占領下で対独協力を拒否し、ロンドンへ逃亡。亡命中のシャルル・ドゴールと知り合い、対ナチスのレジスタンス活動に参加。44年、ゲシュタポに逮捕され、強制収容所に送られるが、絞首刑寸前に脱走。奇跡的に生き延びる。戦後は外交官として活動し、ルーズヴェルト米大統領夫人らとともに世界人権宣言の起草に関わった。その後はドゴールら保守政治と距離を置き、ジュネーヴ駐在の国連大使を務める。引退後も、社会的弱者のために闘いを続け、2002年、現代文明の普遍的な倫理を問うコレジウム・アンテルナシオナルを創設。移民の権利問題やパレスチナ問題などに取り組んだ。2010年秋、わずか32ページのパンフレット〈Indignez-vous!(「怒れ!憤れ!」原題)〉を出版。わずか3ユーロという価格、その率直な言葉が若者の胸に届き、若い人同士のクリスマス・プレゼントに使われるなどしてベストセラーになった。その書は、欧州全域から、世界中で発売され(「Indignez-Vous!」(フランス語版)、「Time for Outrage!」(英語版)、「Empoert euch!」(ドイツ語版)、「Los Indignados!」(スペイン語版))、銀行・金融の不正、経済格差に大きな危機を感じる時代の聖典となり、多くの若者が抵抗・抗議運動に立ち上がるきっかけとなった。スペインの15M運動に始まるヨーロッパの大衆運動〈INDIGNADOS〉や、アメリカの〈ウォール街を占拠せよ!〉運動、さらには〈アラブの春〉にも影響を与えたと言われている。
2013年2月27日逝去。享年95歳。
ステファン・エセルの生きた軌跡は、20世紀の歴史と重なっている。

監督

監督:トニー・ガトリフ Tony Gatlif

1948年生まれ。フランス人の父、ロマの母の間に生まれる。舞台で俳優として活動を始め、75年に初めての映画短編を監督。90年『ガスパール/君と過ごした季節(とき)』がスマッシュヒットし、人気監督となる。2004年の『愛より強い旅』で第57回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞。2009年の『Korkoro』(日本未公開)ではモントリオール世界映画祭最優秀作品賞などを受賞。自身の出自であるロマを題材にした秀作を数多く発表している。自ら作曲も手掛けるなど音楽の造詣も深く、映像・音楽に秀でた感覚を持つ。

■ 主なフィルモグラフィー

1990 ガスパール / 君と過ごした季節(とき)
1993 ラッチョ・ドローム カンヌ国際映画祭ある視点賞
1995 モンド
1997 ガッジョ・ディーロ ロカルノ国際映画祭銀賞、
    最優秀女優賞受賞、ヤング審査員賞、
    エキュメニカル賞、FICC賞
2000 ヴェンゴ ヴェネチア国際映画祭正式出品
2002 僕のスウィング ベルリン国際映画祭正式出品
2004 愛より強い旅 カンヌ国際映画祭監督賞
2006 トランシルヴァニア カンヌ国際映画祭クロージング作品
2010 Korkoro モントリオール世界映画祭最優秀作品賞
2012 怒れ!憤れ!--ステファン・エセルの遺言

Q.この映画を製作するきっかけは?

A.サルコジ(仏大統領*当時)が、2010年7月30日にグルノーブルで行った移民の人権を差別した発言は、本当に恥ずかしいものだった。この発言に対する反響は全国に広がった。人々はキャンプ場に集まり、異議を申し立てた。パリでは広場を占拠した一団を警察が一掃しようとし、男性一人が死亡する事件が起きた。私には映画をつくる以外に何ができるのか。私にはメッセージを持った映画をつくろうと決意した。

Q.映画は2011年2月に死去したジャン=ポール・ドレに捧げられていますが、それはなぜ?

A.私は、ステファン・エセルの「怒れ!憤れ!」を読んだ時、彼の言う“平和的な暴動”にまったく共感したが、当初は、別の脚本を書くつもりだった。ジャン=ポール・ドレは哲学者であり、エセルと同じ思想を持つ人物で、私は彼と週2回、映画の脚本のための打合せをしていた。それはまだ<INDIGNADOS運動>がおこる前のことだった。ジャン=ポールが死んだとき、私は映画をあきらめようかとも考えたが、エセルの本に立ち戻り、製作を続けることにした。エセル本人、そして出版に関わったシルヴィ・クロスマンやジャンピエール・バルーは、直ちに私に映画化権を許可してくれた。

Q.撮影はどのように行われましたか?

A.<INDIGNADOS運動>がスペインで始まった時、私は緊急に、ごく少ないクルーともに駆けつけた。望遠レンズで遠くからデモの様子を撮影するようなドキュメンタリーを撮るつもりはなかった。しかし、誰もが撮影されることを歓迎する訳ではない。私はまず、<INDIGNADOS運動>のスポークスマンに会い、撮影の許可を得、さらにカメラの前の人々に、撮影の目的や、エセルについて、自分自身について説明した。彼らはすぐにインターネットでエセルや私ことを調べ、そして撮影を受け入れてくれた。

Q.この映画のタイポグラフィは、ゴダールやクリス・マルケルを思い起こさせます。

A.タイポグラフィは<INDIGNADOS運動>がいかに実践されたかという事実から来ている。彼らがプラカードや壁にスローガンを書くように、私はスクリーンにスローガンを書き込みたかった。

Q.オレンジが転がるシーンに目を奪われました。

A.オレンジは、2010年12月17日にチュニジアで焼身自殺をした青果商人モハメド・ブアジジを象徴するものでもある。彼は野菜や果物を乗せた重いカートを引っ張って商売をしていたが、いつかピックアップトラックを買いたいと夢見ていた。カートが道路のでこぼこに引っかかりバランスを崩すと、果実は路上に転がり落ちた。オレンジはどんどんと転がっていく。「貧乏人には生きる権利がない」と発言する者にも、このオレンジを止めることはできないのだ。

※オリジナルプレスより抜粋/Interview by Franck Nouchi

INDIGNADOS

2011年のヨーロッパで何が起こったのか ─ 映画に描かれたできごと

スペイン15M運動

2011年5月15日から始まった運動で、15とMayo(スペイン語で5月)で「15M(キンセエメ)」と呼ばれる。首都マドリッドのプエルタ・デル・ソル広場は約2ヶ月に渡って、人で埋め尽くされた。この占拠行動は、マドリッドからスペインの各都市、さらにはヨーロッパ全域、アメリカ、アジアへも広がった。運動の背景には、30歳以下の失業率が50%と言われる高い失業率があり、1月にFacebook上に「今こそ真の民主主義を=Democracia Real, Ya!」というアカウントが現れ、何かを変えたいと思っていた人々に爆発的に拡散、15M運動が生まれたと言われる。

パリ、バスティーユ広場の連帯集会

15Mに連帯する集会が、5月29日にパリ、バスティーユ広場で行われ、数千の人々が集まった。「我々もここで新たなフランス革命を作ろう」というスローガンを掲げた映像が世界に発信され、衝撃をもたらした。

ギリシャ、議会前のデモ

財政状況の悪化が表面化し、国家破産寸前状態だったギリシャでも、15Mに連帯する激しいデモが、連日議会の前で繰り広げられた。

チュニジアの青果商人モハメド・ブアジジの焼身自殺

幼い頃に父を亡くし、学業を諦め、母と6人の弟妹を養わなければならなかったモハメド・ブアジジ(当時26歳)は、軍にも入隊できず、なかなか仕事も見つからなかったが、ようやく得た青果商人の仕事でぎりぎりの生計をたてていた。だが2010年12月17日、果物や野菜を街頭で販売し始めたところ、販売の許可がないとして地方役人が野菜と秤を没収、さらに暴行と侮辱を受けた。彼は3度も、没収された秤の返還を求めて役所に行ったが、役人に払う賄賂が払えず、追い払われた。モハメドは、再び役所前まで来て、焼身自殺を図った。この直後の映像がインターネットに投稿され、全国に広がり、反政府デモ・民主化運動が全土に拡大。ついには、大統領がサウジアラビアに亡命し、23年間続いた政権が崩壊、「ジャスミン革命」と呼ばれた。この運動はチュニジアにとどまらず、エジプトなど他のアラブ諸国へも広がり、各国で長期独裁政権に対する国民の不満と結びつき、数々の政変や政治改革を引き起こした。こうした一連の動きがアラブの春である。

  • 自由であるということは、闘うことを忘れないことだ。
    創造する意志を持って、行動することに他ならない。
    きっと、うまくいく!

    奈良美智(美術家)

  • 2014年2月、ウクライナの独裁政権は民衆のデモによって政権が崩壊した。
    エジプトから始まったアラブの春以来、インターネットの普及もあいまって
    民衆のデモによる社会変革の波が広がっている。
    10年前にイラクに民主主義を、とアメリカが武力攻撃を行った事が同時に想起される。
    あの武力攻撃=暴力がどれだけの命を奪った事か、
    私は忘れることができない。
    ステファン・エセルが「怒れ!憤れ!」と呼びかけた背景には
    目に見えない戦争で奪われる命への共感がある。
    誰かの人権と命が踏みにじられていたら、
    あたかも自らの人権と命が踏みにじられるように感じる、
    そんな共感や愛に裏打ちされた呼びかけだと思う。
    この映画に描かれたような、最も虐げられた人々が差し出すリンゴのように、
    そこに愛があるから共振の輪が広がるのだ。

    鎌仲ひとみ(映像作家)

  • ステファン・エセルのメッセージを伝えるため、想像力を増幅させる驚きに満ちた音楽と映像、そしてタイポグラフィー。
    クリス・マルケルを、そしてゴダールを思い起こさせる、ガトリフの映画作家としての刻印が記されている。

    レキスプレス紙 ★★★★

  • トニー・ガトリフの映画は不屈の魂から放たれる。
    ゴダールやマルケルに言及するこの詩的な映画は、
    楽観主義者の夢物語やルポルタージュを超えていく。

    ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ紙 ★★★★

  • 2011年、世界中で広がった巨大デモの波。いったい誰の為の政治・経済なのか? 
    ロマの血を引き、マイノリティの痛みを誰よりも知るトニー・ガトリフ監督のカメラが、
    放り出された移民の、底辺からの視点を通して、巨大デモのど真ん中にダイブする!
    デモはテロ!?と政府要人が放言した、この崖っぷち日本で、
    EU巨大デモやジャスミン革命の残像・エコーをどれだけキャッチできるか?
    そして想像してみよう。舞台が日本だったら、どんなストーリーになるだろうかと?

    大熊ワタル(ミュージシャン/シカラムータ/ジンタらムータ)

  • 重要なのは映画の内容ではない。ここから喚起される想像力の広がりだ。
    ヨーロッパだけではない。例えばチベットをはじめとするアジアでは、デモさえも封じ込められてしまう地域がある。
    声すらあげられない場所もある。これを機に、歩きだそう。見て、聞いて、想像することからしか、何もはじまらないのだから。

    石川直樹(写真家)

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